SLTAの言語情報処理 Part5:『話す』(音読)の言語情報処理
今回は、前回の『話す』(呼称、復唱)の続き、音読の言語情報処理をみていきます。
認知神経心理学的モデルは下記の画像をご参照ください。
音読も復唱同様に複数のルート(語彙ルートと音韻ルート)が想定されています。
単語の音読
語彙ルート…熟字訓(秋刀魚や土産など)を含む漢字単語や、表記妥当性が高い仮名単語で使用。
文字→文字識別→正書法入力レキシコン→意味システム→音韻出力レキシコン→音韻操作→構音プログラム→構音実行→発話
語彙ルートは文字列を一つのかたまりとして語彙照合しています。
意味システムを中間に前半部分の読解と後半部分の呼称が合わさった形をしています。
非語彙的音韻ルート…仮名1文字や非語(日本語の語彙にない単語)で使用。
文字→文字識別→文字-音韻変換(→音韻出力レキシコン)→音韻操作→構音プログラム→構音実行→発話
語彙的音韻ルート…主として仮名単語に使用。
文字→文字識別→文字-音韻変換→音韻入力レキシコン→意味システム→音韻出力レキシコン→音韻操作→構音プログラム→構音実行→発話
逐次読み(一文字ずつ読む)をして、そこではじめて意味がわかってから、音読します。
例えば、お笑いコンビの『くりいむしちゅー』を初見で音読する時など。(健常者は、一度わかると語彙ルートで音読可能)
では、次に音読の障害過程をみていきます。
語彙ルートの障害⇒表層性失読・・・語彙照合・意味照合を伴わずに1文字ごとに音韻変換し音読する。
例えば、「電車」を「デングルマ」と読むなど。
しばしば超皮質性感覚失語や語義失語に合併します。
この誤りは非語彙的音韻ルートを使用することで生じます。
音韻ルートの障害⇒音韻性失読・・・語彙性効果(音読成績が単語>非語)がみられる失読タイプ
例えば、「ききりすぎ」を「きりぎりす」と読んだり、「とうころもし」を「とうもろこし」と読む語彙化錯読が生じます。
深層性失読…音韻性失読+意味性の錯読
深層性失読は音韻性失読と類似の障害メカニズムを有する失読タイプです。
音韻性失読同様、非語の音読が顕著に障害され、それに加えて意味性の錯読が生じます。
例えば、「警察官」を「おまわりさん」と読む、「甥(おい)」を「いとこ」と読むなど。
音韻ルートの障害と語彙・意味照合の障害を併せ持った失読タイプとなります。
以上、『話す』の言語情報処理とその障害過程をみていきました。
次回は、『読む』編に入ります。