一歩踏み込んだ摂食嚥下の評価〜スクリーニングテストの掘り下げ〜

摂食嚥下の臨床評価において、各種スクリーニングテストを行うと思いますが、今回はそれぞれを掘り下げてしていきたいと思います。

 

代表的なスクリーニングテストとしては、反復唾液飲み検査(RSST)、改定水飲み検査(MWST)、フードテスト(FT)、水飲み検査、咳テストが挙げられます。

 

 

まず、最も安全性の高いスクリーニング検査、反復唾液飲み検査(RSST)で評価できることは何でしょうか?

 

口腔内がある程度湿潤している前提で考えると、嚥下反射を惹起させるには、唾液を咽頭にスムーズに送り込めなければいけません。

 

つまり、1つ目には、口腔から咽頭への送り込み(口腔期)がスムーズにできるかを評価することができます。

 

 

2つ目には、唾液を咽頭に送り込んだ後にスムーズに嚥下反射が惹起されるか(咽頭期)を評価することができます。

 

嚥下反射が惹起されにくいということは、閾値が上昇している、つまり感覚が低下していると評価できます。

 

唾液は、常温であり、かつ体液ということで冷水などに比べると刺激強度としては弱いので、感覚低下があると嚥下反射は惹起されにくくなります。

 

つまり、RSSTをクリアできるということは、唾液の咽頭への送り込みがスムーズで、嚥下反射の惹起遅延もない(あっても軽度)ということが評価できます。

 

 

 

次にMWSTについてですが、この検査は、水飲み検査への繋ぎと位置づけるだけはなく、食形態の選定にも役立てることができます。

 

詳細については別記事『MWSTを用いた摂食嚥下評価の精度を上げるコツ』に具体的に記載していますので、そちらをご参照ください。

 

 

そして、FTですが、ここでの評価のポイントは、口腔内残渣の捉え方だと思います。

 

口腔内残渣が中等度あれば、FTの評価点は3点となり、クリアしてるとは言えません。

 

この検査では、口腔内残渣が中等度あるということは、誤嚥や湿性嗄声と同等の重み付けがされているのです。

 

 

口腔内残渣をただの口腔準備期や口腔期の障害と捉えるのではなく、咽頭期障害にも結びつく所見と捉えることができます。

 

なぜなら、口腔内に残留しているということは、高率に咽頭にも同じように残留していると考えられるからです。

 

改めて言うまでもなく咽頭残留が多ければ多いほど、誤嚥や窒息のリスクは高まります。

 

特に高カロリーゼリーやミキサートロミ食(ペースト食)のFTで、口腔内をぺっとりとコーディネートするような残留がみられた時は、中等度未満だとしても注意が必要と思われます。

 

また、私はFTを発展させて、食事提供量の判断材料にする評価法も提案しています。

 

詳しくは、別記事『適切な食事提供量の決め方~タイムテストの提案~』をご参照ください。

 

続いて、水飲み検査ですが、これはFTやMWSTをクリアした方のみ行うと思いますが、この検査をクリアできればかなり安心できます。

 

なぜなら、多くの摂食嚥下障害の方にとって、(とろみなしでの)水分摂取は最も難易度の高い課題となるからです。

 

ただ、一口量が多いと誤嚥する場合は、一回の嚥下での処理容量が低下していると考えられ、咽頭クリアランス能が低下していると評価できます。

 

また、連続飲みだと誤嚥する場合は、嚥下反射のタイミングにズレが生じていると考えられ、嚥下反射遅延が軽度にあると評価できます。

 

 

最後に咳テストですが、これをクリアできれば、ムセがない=誤嚥していないと評価しやすいですし、逆にクリアできない場合や咳が出るまでに遅延がある場合は、不顕性誤嚥の可能性を考慮してモニタリング期間を増やすなどの対応が可能となります。

 

 

この咳テストは携帯型ネブライザーやクエン酸水溶水を準備さえしておけば、簡単に、かつ大きなリスクもなく実施でき、なおかつ非常に有益な情報を得られますので、大変おすすめです。

 

詳しくは別記事『不顕性誤嚥のスクリーニングテスト~咳テストの提案~』をご参照ください。

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