不顕性誤嚥のスクリーニングテスト~咳テストの提案~
突然ですが、最も分かりやすい誤嚥の所見はなんでしょう?
そうです!ムセですね。
誤嚥した時にむせるのは、気道に侵入した異物を喀出するための生体の防御反応として、咳反射が機能している証です。
しかし、高齢者や現病・既往歴に脳血管障害、挿管・気管切開、誤嚥性肺炎がある場合などでは、誤嚥してもむせない(咳反射が起きない)状態が少なからず見受けられます。
このようなムセのない誤嚥を不顕性誤嚥といいますが、その不顕性誤嚥のリスクを簡単にスクリーニングできるテストがあります。
それが、今回紹介する『咳テスト』です。
咳テストには、2種類のやり方があります。
1つめは、1%濃度のクエン酸生理食塩水溶液を超音波ネブライザから1分間噴霧し、鼻閉した患者に口から吸引させる方法です。
1分間で咳が5回以上であれば陰性(正常)と判定し、感度0.87、特異度0.89と報告されています。
2つめは、1%濃度のクエン酸生理食塩水溶液をメッシュ式ネブライザから最長1分間噴霧し、患者が咳をするまでの秒数を計測する方法です。
30秒間に1回でも咳があれば、その時点で陰性(正常)と判定し、感度0.92、特異度0.94と報告されています。
当院では、2つめの簡易咳テストを採用しています。
簡易咳テストを導入するにあたり、まず、準備するものですが、
1、携帯型のメッシュ式ネブライザ
2、1%濃度のクエン酸生理食塩水溶液
以上の2つが必要になります。
1は、『オムロン メッシュ式ネブライザ NE-U22』を当院では使用しています。
2は、クエン酸と生理食塩水を用意して、1%の濃度で混ぜ合わせます。
当院では、院内薬局で1gのクエン酸(顆粒状)を個包装してもらい、99㎖の生理食塩水に溶かし、100㎖の1%濃度クエン酸生理食塩水溶液をつくって保管しています。
100㎖あれば、20~30回程度の咳テストが実施できると思います。
摂食嚥下のスクリーニングテストでVFやVE、FT、MWSTや水飲みテストをクリアしたとしても最後にこの咳テストが陽性なら、不顕性誤嚥のリスクを考慮した評価・介入が可能となります。
逆にこの咳テストですぐに咳反射が生じるのを確認できれば、それは、誤嚥したらムセがみられるという証明になるので、その後の評価や対応がより正確かつ、迅速に可能となります。
注意事項として、喘息など呼吸器系の基礎疾患を持つ患者に施行する際は、急変時の対応等に注意を払う必要はありますが、臨床において大変有用なスクリーニングテストだと思います。