SLTAの言語情報処理 Part3:『聞く』の障害過程
今回は、SLTAの言語聴覚処理の第3弾(Part3)、『聞く』の障害過程について書いていきます。
『聞く』の障害は下記のように階層分けできます。
難聴・・・音が聞こえにくくなる。聴覚の閾値上昇
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狭義の聴覚失認・・・音は聞こえているが言語音や環境音(動物のなき声、乗り物の音、電話の音など)、音楽のメロディ、これらいずれも認知困難になる。第一次聴覚野もしくは聴放線が両側に損傷
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語音聾=広義の聴覚失認・・・障害が比較的言語音に限定される。一側性の損傷。古くから語聾と呼ばれていたが近年では語音聾と呼ばれている。狭義、広義問わず音響分析レベルの障害
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音韻聾(2005,小嶋)・・・音素弁別段階の障害(語音聾)はないが、正しく聞き取った語音を音韻(いわゆる五十音、日本語は約110ある)と照合させる段階(音韻照合)の障害。 語音の異同弁別は可能。
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語形聾・・・正しく聞き取った音韻列が日本語の単語なのかどうか、つまり語彙か語彙でないか正しく判断できない障害。語彙照合の障害
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語義聾・・・音韻列を語彙として認知できるが、意味がわからない、もしくは違う意味にとってしまう障害。意味照合の障害
以上、いずれの階層における障害においてもSLTAの『聞く』の下位検査では誤りが生じます。
どの階層で誤ったのか、その質的な評価が重要です。
誤りの背景にある障害メカニズムを明らかにしてこそ、的を得た訓練立案や介入に繋がるからです。
また補足となりますが、SLTAでは検査時に絵を見て指さすという形をとっていますので、まずその絵の物体認知が正しくできているかの確認が必要です。
物体認知の障害は高次脳機能障害の一つで、視覚失認と呼ばれています。
代表的なものに下記の2種類がありますので、簡単に説明を加えておきます。
統覚型視覚失認・・・見えているが形や位置、色、動きなどに関する情報を正しく認知できない
連合型視覚失認・・・形態は正しく捉えられているがそれが何かわからない