とろみ濃度とその統一方法
水分へのトロミ付けは誤嚥を予防・軽減するために非常に効果的な方法です。
経口での水分摂取は、嚥下障害のある方にとって最もと言っていいほど難易度が高いというのは、他の記事「なぜお茶にトロミをつけるのか?つけなくてはいけないのか?」にも書いています。
水分での誤嚥所見(ムセなど)を認める場合にそれを予防・軽減しようと思ったら、別記事「ムセない(=誤嚥しない)水分の飲み方」で書いた方法やトロミをつけると思います。
しかし、トロミが薄いとムセるからとむやみにトロミを濃くすると飲み込みづらくなったり、咽頭残留から誤嚥に繋がったりと逆効果のこともあります。
そこで、適切な濃度を知り、いつでも同じようにトロミ付けできる仕組み作りが、誤嚥を予防・軽減するために重要となります。
摂食嚥下リハビリテ―ション学会では、トロミ濃度を大きく3つ(薄いとろみ、中間のとろみ、濃いとろみ)に分類しています。
*詳しくは、別記事『学会分類に基づくとろみのつけ方』をご参照ください。
トロミ剤にもパッケージなどに3段階に分けてトロミ付けの目安が書いてあるものが多いです。
病院や施設でトロミ濃度を統一して設定する場合、幅広い嚥下障害の方に対応するには一つの濃度だけでは不十分かと思われます。
最低2種類(濃いとろみ、中間のとろみ)か、余裕があれば3種類(薄いとろみも加える)あれば、細やかな個別対応が可能ですね。
トロミ剤も多種多様な商品が発売されていますので、いくつか候補を挙げて飲み比べ、値段だけでなく、味や食感、作りやすさ(だまになりにくい)など比較検討してみるとよいと思います。
ちなみに当院では、「ソフティア」という商品を使用しています。
他にも「つるりんこ」というのが、評判もよく、広く病院・施設で使用されているようです。
たしかに、「つるりんこ」は味や食感が良かったのですが、当院は透析をされる方が多いためカリウムの含量が多いとの理由で「ソフティア」に決定しました。
そして、とろみ濃度を設定したら、それを周知、徹底できるよう関係各位にお膳立てをしていきます。
この“お膳立て”が、意外と大切です。
「やってください」だけでは、なかなか動いてもらえないので、濃度や作り方が一目でわかるよう紙面を作成し、必要物品(軽量スプーン、軽量カップ、お茶入れ容器、マドラーなど)もすべて買い揃えます。
そして、例えば…
軽量スプーンなら、中間のトロミは、お茶100㏄に対してトロミ剤をこのスプーン擦り切り一杯、濃いトロミはお茶100㏄に対してトロミ剤をこのスプーン擦り切り一杯など、わかりやすいように2種類用意するとか。
お茶入れ容器なら、あらかじめ計量して線引きしておき、この線までお茶を注いでこのスプーンでとろみ剤を何杯入れると中間のトロミが作れるといった用意をしておきます。
ここまで、お膳立てをして説明やお願いをしていくと比較的スムーズに周知徹底できると思います。