ムセない(=誤嚥しない)水分の飲み方
摂食嚥下障害の方にとって飲水(経口での水分摂取)は難易度が高く、軽度の嚥下障害においても誤嚥を起こしやすいものです。
一見、普通に食事ができていたのに脱水や食思低下していくケースに水分の誤嚥、それも毎回ではなく時々起こる誤嚥(=機会誤嚥)が関係していることも多いと思われます。
「なぜ、普通にごはんを食べていたのに嚥下障害なの?」と疑問をもたれるケースもあります。
そのきっかけは加齢などにより水分の機会誤嚥をきたす程度に嚥下機能が低下することから始まります。
そのわずかな誤嚥から、水分摂取を控えたり、食欲(食事摂取量)が低下し、それが脱水や低栄養をきたし、嚥下障害が増悪するという悪循環に陥ることがあります。
嚥下障害が顕在化し、水分摂取でのムセを頻回に認めるようになれば、いずれ脱水や低栄養、誤嚥性肺炎につながりやすくなりますので、注意が必要です。
たまにムセる程度でしたら、咳が強かったり、身体機能が保たれていれば(自力で立てる、歩ける等)、すぐには誤嚥性肺炎になりにくいです。
しかし、それでも誤嚥が増えていけばボディブローのように徐々に効いてきます。
そんな水分誤嚥を軽減する対応としては、水分にトロミをつけるということが、極めて有効的です。
トロミをつける際は、片栗粉など使用し自己流でやらずに必ず市販のトロミ剤を使用し、そのトロミ剤の用法・用量を守るようにしてください。
誤ったトロミ付けは、喉にひっかかったり、詰まるといった逆効果になることもあるので、注意してください。
最近のトロミ剤はかなり進化しており、トロミをつけても味の変化がほとんどなく、食感というか、いわゆる“のど越し”もよくなってきています。
が…しかし、それでも水分にトロミがつくと違和感を感じて飲みたくないということもあると思います。
また、トロミ付けの手間もかかり、面倒だということもあります。
そんな時は、トロミ付けの前に次の3つの方法をいずれか試してみて下さい。
①『(気をつけて)一口ずつ飲む』
②『ストローをさして飲む』
③『スプーンを使って飲む』
以上の3つです。
②のストローは細ければ細いほどよく、ヤクルトについてくるストローくらいの細さですと最も効果が高いと思われます。
また、③のスプーン飲みの際は、必ず水分を口に一度留めてから飲むようにしてください。
介助する際も一度口腔内に留まるよう注意してください。
声掛けしたり、口の奥までスプーンを入れずに手前で口の下(口腔底)に注ぐイメージで介助するとよいと思います。
それでもムセるようなら、ムセ=誤嚥ですので、誤嚥を防ぐためには、やはりトロミ付けが必要になってくると思います。
トロミをつけてもムセる場合やトロミの濃度を最小限にしたい場合も上記3つの方法は有効です。