水分の性質と咽頭期の関係〜なぜ、お茶にとろみをつけなければならないのか?〜

飲水はなぜ嚥下障害患者にとって難易度が高いのでしょうか?そして、なぜトロミをつけるとその難易度は下がるのでしょうか?

 

一般的には、水は喉を通り易く、嚥下障害があって食べ物は食べられなくても(喉を通らなくても)水分くらいなら摂れるだろうと思われがちです。

 

そのため、家族さんが患者さんにジュースなどの水分を経口摂取させ、誤嚥させるといった状況は幾度となく経験します。

 

 

嚥下障害、特に咽頭期の障害は大きく2つのポイントに集約できると思います。

 

すなわち、下記の2点です。

 

①嚥下反射のタイミング
②咽頭のクリアランス

 

嚥下障害の患者さんは①の低下か②の低下、あるいは(…というかほとんどですが)①②の両方が低下することによって、嚥下障害をきたしています。

(STはそのどちらがより咽頭期の障害として問題となっているのか、タイミングの遅れやクリアランスの低下の原因は何かをそこから更に探り、対策を立てていきます。)

 

 

ここで、水の性質をみてみると、

①スッと流れ落ちやすい
②まとまりにくく、バラけやすい

というのがあります(他にも色々ありますが)。

 

これを少し専門的に言い換えると

①流動性が高く、咽頭の通過速度が速い
②凝集性が低く、拡散性が高い

と言えます。

 

 

そうなると、

①タイミングが合わず気管に入る=誤嚥
②拡散して気管に入る=誤嚥

となりやすい訳です。

 

 

それをトロミをつけることによって、

①流動性を低下させ、咽頭の通過速度を遅くする
②凝集性を高め、拡散性を低下させる

ことができ、

それは、すなわち〝誤嚥しにくくなる″ということに繋がります。

 

病院や施設等で何気なく行われているトロミをつけるという行為は理にかなっている訳です。

 

しかし、トロミをつけ過ぎると今度は咽頭残留して嚥下後誤嚥を引き起こす、または飲みにくくなり過ぎて脱水を引き起こすなんて弊害もあります(これが結構問題…)。

 

そのため、適正なトロミ濃度を知り、これを守るということが必要なんですが、詳しくは別記事『学会分類に基づくとろみのつけ方』『とろみ濃度とその統一方法』に書いていますので、よろしければ是非ご参照ください。

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