誤嚥しているのに現状維持やアップできる人の条件
誤嚥によるリスクは、窒息や誤嚥性肺炎だけでなく、脱水や低栄養などがあります(別記事『摂食嚥下障害の4大リスク』を参照)。
このリスクを回避するには、誤嚥所見を見逃さないことが大切です。
※誤嚥所見について詳しく知りたい方は、別記事『誤嚥を疑う所見・観察ポイント』にまとめていますので、是非ご参照下さい。
基本的には、誤嚥所見を認めたら、すぐに対処するのが大原則です。
対処としては、食形態を見直す(downする)、摂取量を調整する、食べ方・姿勢を工夫する、などがあります。
しかし、これらの対処がQOLの低下に繋がることも少なからずあると思います。
リスク回避にはなれど、QOLの観点からみるとこの対処が本当にその人にとって良かったのだろうかと考えることもあるかと思います。
また、食形態の変更は食思にも大きく影響するため、そのことが頭を悩ませる場面もあるかと思われます。
そこで、今回は、誤嚥所見のあるなかで、現状維持やアップが可能な人の条件をご紹介していきます。
では、ずばり、その条件を3点挙げていきます。
①身体機能が高い・・・具体的には、立位が可能。最低でも端座位が可能。
②摂取量が平均7割以上・・・10割摂取に近いほどよく、自己摂取可能ならなお良しです。
③呼吸器症状を伴う熱発や痰の増量がない・・・逆の場合は、誤嚥性肺炎のリスクは非常に高い状態です。
上記3点が満たされていてかつ、本人や家族、場合によっては医師や看護師、介護士といった関係者の合意が得られれば、現状維持で様子をみるのはアリだと考えます。
さらに、誤嚥所見、例えば食事中のむせなどが認められるのに食形態や摂取量(提供量)のアップを図る場合は、上記①~③の条件を満たしていることは当然のこと、さらに条件①の身体機能が歩行可能なレベルであることが必要と考えます。
むせはあるけれど、食事量をしっかりとれていて、かつ寝たきりでなく身体機能が比較的高い方は、そのまま現状維持可能な印象があります。
それは誤嚥があってもそれに対する抵抗力も強いということで、その抵抗力を表す指標として身体機能や摂取量(食思)に反映されているのではないかと考えます。
俗に「食べ力がある人は、(生命力が)強い」と言いますが、本当にそうだなと感じます。
誤嚥所見があっても現状維持で経過観察していくなかで、条件③の呼吸器症状(咳や呼吸変化など)を伴う熱発や痰が増加した場合には早急に対処を行うとすれば、QOLとのバランスをとりながらのリスクコントロールが可能ではないでしょうか。