誤嚥を疑う所見・観察ポイント

今回は、タイトルの通り、誤嚥を疑う所見・観察ポイントを列挙していきたいと思います。

 

①むせ(咳嗽)

これは最も一般的に知られているものですね!

むせがあるのは、誤嚥(気管・声門下に空気以外の異物が入ること)に対して生体の防御反応として咳反射が起きているということになります。

つまり、むせがある=誤嚥があると言えます。

しかし、このむせのない誤嚥を不顕性誤嚥と言い、高齢者や嚥下障害の方に多くみられるので注意が必要です。

 

②湿性嗄声、湿性呼吸音

これは、上記の不顕性誤嚥を疑う大事な所見です。

声や呼吸音にガラガラ、ゴロゴロといった湿った音が混じってないか確認します。

 

③呼吸変化

これも不顕性誤嚥を疑う所見です。

呼吸切迫やSPO2の持続的な低下には特に気をつけてください。

 

④痰の増加

これは、個人的に最も見逃してはいけない所見・観察ポイントだと思います。

誤嚥性肺炎の徴候とも言えますので、経口摂取により痰の増加がみられたらなんらかの対処が必要と考えます。

 

⑤熱発

熱発の原因としては、尿路感染症やカテーテル感染症(spike fever)などもありますので、誤嚥を疑う所見としては、特に呼吸器症状(咳、痰、呼吸変化など)を伴う熱発に注意してください。

 

⑥CRPの上昇

CRPは炎症反応を測る血液データですので、誤嚥による気管支炎や肺炎を反映している場合が考えられます。

 

⑦食思低下

熱発や痰の増加の前に、誤嚥性肺炎の兆候として食事摂取量の低下や食事時間の延長といった食思(食欲)低下がみられる場合があります。

また、誤嚥の自覚はなくても誤嚥するために食べたくなくなっている場合もあります。

 

⑧活気低下

これも見逃せない所見です。

なんとなくぼんやりしている、元気がなくなっていると感じたときは誤嚥がないか食事場面を注意して観察するとよいと思います。

 

⑨口腔内汚染

これも臨床上、重要です!

口腔内が痰で汚染されているのを見つけることで、痰の増加=不顕性誤嚥に気づくことも少なくありません。

 

大きく9項目挙げましたが、補足として下記に3項目挙げておきます。

 

1.中等度以上の口腔内残渣・・・器質的な問題がない場合、口腔内残渣が多いと高率に咽頭残留があります。

2.咽頭ラ音(貯留音)・・・咽頭ゴロ音とも言われます。咽頭に痰や唾液、食物などが貯留している音です。

3.嚥下音の増強・・・聴診器を使わなくても聞こえるゴキュ!という音です。

 

いずれも咽頭残留(咽頭クリアランス能の低下)を疑う所見ですが、その咽頭残留が高率に誤嚥に繋がるリスクとなり得ますので、あわせて注意が必要です。

 

 

以上、まとめると下記のようになりますので、ご確認ください。

 

 

むせ(咳嗽)
湿性嗄声・湿性呼吸音
呼吸変化呼吸切迫、SPOの持続的な低下
痰の増加
熱発特に呼吸器症状(咳、痰、呼吸変化など)を伴う熱発
CRPの上昇
食思低下食事摂取量の低下、食事時間の延長
活気の低下
口腔内汚染
中等度以上の口腔内残渣 

Ⅰ~Ⅲは咽頭残留を疑う所見⇒誤嚥のリスク

咽頭貯留音(咽頭ラ音)
嚥下音の増強

 

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