むせ(誤嚥)がある時、食事を中止すべきか?続けるべきか?
今回は、患者さんがせながら食事をしている場合、食事を中止すべきかどうかについて書いていきます。
むせは誤嚥所見の中でも最も代表的でわかりやすいものですよね。(誤嚥所見について詳しくは別記事『誤嚥を疑う所見・観察ポイント』をご参照ください。)
誤嚥所見を認めたら、すぐに対処するのが大原則です。
対処としては、食形態を見直す(downする)、提供量を調整する、食べ方・姿勢を工夫する、などがあります。
しかし、これらの対処を行っても誤嚥を軽減できず、肺炎リスクが高い場合には最終手段として、食事中止を検討する必要が生じます。
食事の中止(経口摂取の中止)が誤嚥によるリスク回避としては即効性があり優れていたとしてもその後の栄養管理やQOLの観点から考えると悩ましいことが多々あるかと思われます。
そこで、そのような悩ましい場面で判断していくための指標を示していきたいと思います。
それは、以下の3点です。
①身体機能が高い・・・自立歩行ができるなど高ければ高いほどよいですが、基本的には立位が可能なレベル。最低でも端座位が可能なレベルはほしいです。
例外として、身体機能が低い方でもむせた際の咳が非常に強い場合は、誤嚥物の喀出力が保たれていると考えられますので、以下の②③の条件を考慮しながら様子を見していくことは可能と思われます。
②摂取量が平均5割以上・・・10割摂取に近いほどよく、自己摂取可能ならなお良しです。平均して5割未満、特に1〜2割の摂取量が続いているとするとご本人にとって食べることが苦痛になっているということも考えられます。
③呼吸器症状を伴う熱発や痰の増量がない・・・逆の場合は、誤嚥性肺炎の発症リスクは非常に高い状態です。場合によっては誤嚥性肺炎をすでに起こしている状態かもしれません。
以上の3点が満たされていてかつ、本人や家族、場合によっては医師や看護師といった関係者の合意が得られれば、食事を中止せずに様子をみていくのはアリだと考えます。
上記3つが満たされているということは、誤嚥があってもそれに対する抵抗力も強いというを反映していますので、判断の指標にしていただければ幸いです。
むせ(誤嚥)があっても食事を続けていくなかで、条件③の呼吸器症状(咳や呼吸変化など)を伴う熱発や痰が増加があった場合には速やかに食事を中止するとしておけば、QOLとのバランスをとりながらのリスクコントロールが可能ではないでしょうか。
その食事中止を一時的なものにするのか、継続的なものにするのかは、その後の全身状態やリハビリの進捗状況をみながら評価していく必要があるのは言うまでもありません。