口を閉じない患者さんの口を自然に閉じさせる手技
臨床では、咽頭のアイスマッサージや直接訓練(食事介助)において口を閉じて欲しいタイミングでなかなか口が閉じず、開いたままになっている患者さんに少なからず出会うと思います。
特に覚醒や認知機能に低下がある場合に多いのではないでしょうか。
また、有効な嚥下には必ず口唇閉鎖が必要ですから、開口したまま嚥下反射が起こると咽頭クリアランスが低下しますし、逆に自然な口唇閉鎖を促せればそれがキッカケとなって口腔内も絞り込まれ(咽頭への送り込みが開始され)、嚥下反射が誘発されることもあります。
さて、そんな訳で本題の手技ですが、これがまたとても簡単なんです。
親指と人指し指をそれぞれ左右の口角に配置して正中に向かって口輪筋を軽くつまむようにこすっていけばいいのです。
これを上唇側、下唇側と何度か素早く繰り返すと自然に閉口が促されていきます。
よく閉口させるために無理やり下顎を上方に押し込んで他動的に閉口させがちですが、これは抵抗が強かったり、奥歯は噛み合っても口唇は閉じきっていないなんてことになりやすいです。
今回紹介した手技では、キッカケ(刺激)を与えて、あくまで能動的に口唇を閉じてもらっている点で、無理やり口を閉じるより、自然に口唇閉鎖を促せます。
もちろん、「はい、口を閉じてくださいね」といった声掛けをしながら自動運動のアシストとして使うのも良いですし、更に空嚥下を促すには口を閉じた後に「はい、そのまま唾を飲んで下さい」と声掛けするのもいいですね。