/ra/の連続構音での歪み
標準ディサースリア検査(AMSD)に/ra/の連続構音の検査項目がありますね。
/ra/を単独で構音すると歪まないのに連続で構音すると歪みが生じる場合、通常は、子音の/r/の構音点や構音動作が正しいかに注目すると思います。
しかし、発話がこもったような聴覚印象の人は、むしろ子音に続く母音(/ra/の場合は/a/)の構音が正確でない(歪んでいる)パターンもあり得ます。
特にゆっくり意識的に単独で構音する場合は問題ないのに連続構音時に違和感がある場合は、そういったパターンも多いのではないかと思います。
それは、前の子音/r/に引きづられて(もしくは次に備えて)本来の日本語の母音/a/が『(非円唇)中舌広母音』であるのに『(非円唇)中舌半狭母音』になっているのではないかと。
つまり、母音の発声の際に舌が口腔底に収まっていない状態、日本語の/あになってるということです。
それで、声がこもったような聴覚印象を受けたり、違和感を感じるのだと思います。
/ra/の場合は、舌尖が硬口蓋に接地した後、素早く口腔底に舌が収まるか(広母音になってるか)が大事なんですね。
例えるなら、ボクシングのジャブを打った後、拳を素早くガードの位置に戻さないといけないのと同じ?ですかね。
患者さんにフィードバックする際もそのポイントを意識してもらうとよいかと思います。
そんな訳で、特にUUMNタイプのディサースリアなど軽度の構音障害の場合、舌の巧緻性を向上させる訓練が大切で、舌圧子を使っての抵抗運動などで筋力向上を図るより、反復促通手技的に舌の素早い反復運動がより効果的かと思われます。
もちろん、回復期を過ぎて機能的にプラトーに達しているようなら、機能改善のみにこだわらず発話速度の調整法(リズミックキューイング、ペーシングボードなど)にシフトしていく必要もあります。