経腸栄養法と経静脈栄養法のメリット・デメリット
栄養管理法は、経腸栄養法か経静脈栄養法に大別されます。
今回は、それぞれのメリットとデメリットをまとめてみます。
経腸栄養法は、消化管の機能を使う栄養法で、経口栄養法(経口摂取)や経管栄養法があります。
さらに経管栄養法は、経鼻法(経鼻経管栄養法)と経瘻孔法(胃瘻・腸瘻)に分かれます。
つまり、経腸栄養法は、経口摂取、経鼻経管栄養法、胃瘻・腸瘻の3種類に分けられます。
※経鼻経管栄養法と胃瘻のメリットとデメリットに関しては、別記事『経鼻経管栄養法と胃瘻栄養法のメリットとデメリット』にまとめていますので、よろしければご参照ください。
経静脈栄養は、末梢静脈栄養法(PPN)と中心静脈栄養法の2種類に分かれます。
それぞれの説明は下記の通りです。
末梢静脈栄養法・・・末梢静脈にカテーテルを留置し、低濃度の輸液剤を投与する方法。
中心静脈栄養法・・・中心静脈(上大静脈)にカテーテルの先端を留置し、高濃度の輸液剤を投与する方法。 生命維持に必要なすべての栄養素とエネルギーを投与できることから、完全静脈栄養法(TPN)とも呼ばれる。
経腸栄養法は、経静脈栄養法と比べると下記の長所があります。
①生理的である
②管理が容易である
③コストが低い(経静脈栄養法の1/2~1/3)
一方、経静脈栄養法は、経腸栄養法に比べて下記の長所があります。
①消化管の機能を必要とせず、どんな症例にも施行できる
②水分やエネルギーの出納が明確
③中心静脈栄養法は長期間カテーテルを留置でき、生体に必要な栄養素とエネルギーをすべて投与できる
長所を比べると実施者にとっては経静脈栄養法の方が施行しやすいように思われます。
また、消化管が安全に使えない場合(イレウスや消化管出血など)、コントロール不能な下痢や嘔吐がみられる場合は、経静脈栄養法が選択されます。
しかし、経静脈栄養法(中心静脈栄養)に頼って長期間消化管を使わなければ、様々な障害を引き起こし、合併症や入院期間の延長につながるといった弊害もあります。
長期間消化管を使わないことによる様々な障害というのは…
1.腸管粘膜の萎縮による吸収機能の低下
2.消化機能の低下
3.免疫能の低下
4.肝機能の低下
などです。
栄養管理法の選択の目安としては…
消化管が安全に使用できる⇒経腸栄養、できない⇒経静脈栄養
経腸栄養の期間が6週未満⇒経鼻経管、6週以上⇒胃瘻・腸瘻
経静脈栄養の期間が2週未満⇒末梢静脈栄養、2週以上⇒中心静脈栄養
となっています。
*東口高志、他:中心静脈栄養法(TPN)のformulas、臨床外科、58(5)、P620、2003より
最後に経腸栄養法と経静脈栄養法のメリットとデメリットを表にまとめましたので、ご参照・ご確認ください。
| 【長所】 | 【短所】 |
経腸栄養法 | ● 生理的な経路による栄養法であり、腸管粘膜萎縮などによる合併症がない ● 全身の免疫能が維持できる ● 代謝も生理的に行われるので栄養価が高い ● 手技・管理が容易であり、それに伴う合併症が少ない ● 経静脈栄養法に比べるとコストが1/2~1/3と低い | ● 消化管の機能が必要 ● 経鼻栄養法は患者に苦痛を伴いやすい ● 経鼻栄養法は嚥下訓練において不利な面がある ● 胃瘻栄養法は手術の適用が必要
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経静脈栄養法 | ● 消化管の機能を必要としない ● 水分やカロリーの出納が明確 ● 中心静脈栄養法は、生体に必要な栄養素とエネルギーを投与できる ● 末梢静脈栄養法は容易に施行できる | ● 腸管粘膜萎縮などによる合併症を発症する ● 中心静脈栄養法は、手技・管理が煩雑なため、それに伴う合併症発生の危険性がある ● 末梢静脈栄養法は、投与エネルギー量に限界がある ● 経腸栄養法に比べてコストが高い |