刻み食は本当に食べやすいのか?
今回は、刻み食の弊害について知られているようで意外と知られてない内容を書いてみます。
家族さんや他職種に説明するときも知っておいて損はないことだと思います。
まず、自分で食べてみるとわかるのですが、刻み食は食物が口の中でバラつくので、意外とまとめにくい(食塊形成しにくい)です。
自分でもまとめにくいのだから、これが準備期や口腔期に低下がある人なら、なおさらじゃないかと思います。
片麻痺を呈している方では、より麻痺側に残渣が生じやすくなりますね。
人肌の温度になった残渣は刺激強度としては低く、口腔で留まってデンタルプラーク化した残渣を誤嚥するリスクは結構高い(特に口腔ケアが十分でない環境では)かと思われます。
また、これは文献で知ったことですが、刻み食では、一口大の食形態より実は咀嚼回数が増えるそうなんです。
咀嚼は、食物をいたずらに細かくする為に行っている訳ではなくて、個人的に飲み込みやすい食塊にするために行っているので、刻み食は飲みやすい食塊にまとめるために咀嚼を多く要すとのことです。
一般的にあまり咀嚼しなくて済むようにと提供されている刻み食が、実は一口大より咀嚼を要するという矛盾が生じています。
咀嚼が多くなるということは、プロセスモデル(咀嚼嚥下モデル)に照らすとそれだけ咀嚼中に咽頭に送り込まれる訳ですから、感覚低下がある場合は嚥下反射のタイミングがズレて誤嚥のリスクも増しますね。
そんな訳で一般の高齢者の方はもとより、摂食・嚥下障害の患者さんには、特にそういったところも考慮して、刻みとろみにしたり、一口大にしたり(場合によってはやはり、刻み食がいいこともありますし…)、考えていくのがよいと思います。
噛む力が弱ければ、軟菜一口大(柔らかいおかずの一口大)というのもいいかもしれません。