『今日は何日ですか?』といった声掛けの問題点

病院で働いていると『ここは何処か分かりますか?』や『今日は何月何日ですか?』といった声掛けをちょくちょく見かけます。

 

また、介護の現場でも頻回にされているように思います。

 

しかし、場合によっては、この声掛けは見当識障害を増長させる原因となり得るのです。

 

認知症の為、明らかに正答を得られないことがわかっている場合は、この様な質問をして誤答させることで、より本人の記憶を混乱させてしまうのです。

 

なぜなら、知的機能の低下や記憶障害により正しい情報の取捨選択が困難となっているためです。

 

自分の誤答を訂正されても何が正答で何が誤答であったのか、後々、よく分からなくなるのです。

 

その為、毎回のように同じ誤答を繰り返させるとその情報(記憶)が逆に強化されてしまいます。

 

例えば…

職員『今の季節はわかりますか?』

Aさん『夏かな』

職員『違いますよ。今は2月だから、冬ですよ』

Aさん『ああ、そうか』

職員『そうですよ。ちゃんと覚えておいて下さいね。外は寒いですよ。』

 

と、このようなやりとりを毎日のようにしているとAさんは、訂正されたことは忘れて、初めに自分の意思で答えた『今は夏である』という記憶が強化されることがあるのです。

 

 

なので、どうすれば良いかと言うと…

はじめから間違いを起こさないように、手掛かりを提示した上で答えてもらう必要があります。

 

手掛かりは、時計でもカレンダーでもメモでも何でもいいのですが、とにかく、誤りを起こさせないようにして正しい情報のみを繰り返し伝えるのです。

 

ちょっとでも、誤らせてはいけません。

 

例えば…

Aさん『今は、なつ…』

職員『違う!違う!冬ですよ』

 

これでは、遅いのです。

 

 

そうでなくて、例えば…

職員『このカレンダーを見て下さい。今はこの月ですね。見えますか?』

Aさん『うん、2月だね』

職員『そう、2月ですね。外は寒いですよ。2月なので、今の季節は冬ですね。』

Aさん『そう、冬だね』

 

…と、まぁ、こんな感じです。

 

もちろん、手掛かりはその人の程度に合わせて下さい。

可能なら少しずつ手掛かりを少なくしていくのも有効です。

 

 

ちなみに、これは『誤りなし学習(errorless learning)』と呼ばれています。

 

認知症の方に生活動作の支援をする時も、この考えを知らないと、むしろ誤った動作を強化してしまいかねません!

 

つまり、頑張って教えようと〝誤り″をその都度、訂正していても正しい動作は学習されず、混乱を招き徒労に終わることに…

 

『誤りなし学習』
意外と知られてませんが、非常に大事なことだと思います。

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