頚部前屈位と頭部前屈位の大きな違い
寝たきりレベルの方の経口摂取を維持しようと思ったら、頚部の拘縮をいかに防ぐか、防げるかが大きなポイントになると思います。
また、直接訓練(摂食訓練)や食事介助においても頚部のポジショニングに注意するだけで、結果は随分と変わるのではないでしょうか。
そんな訳で、摂食・嚥下において、頚部のポジショニングは非常に重要となります。
STにとって、姿勢や頚部のポジショニングがどうかということは非常に敏感なことですが、他職種や家人さんにとっては、驚くほど無頓着な場面にまま出くわします。
今回は、そんな頚部ポジショニングについて、特に勘違いされやすい頚部前屈(屈曲)と頭部前屈(屈曲)の違いについて書いていきます。
頚部前屈位は、嚥下に最も有利なポジションと言われています。
自分が食べる時のことを考えたら、納得できるのではないでしょうか。
自然と首全体(頚椎のC1~C7)を緩やかにカーブさせて、食べて(飲み込んで)います。
ベッド上リクライニング位で食事を提供する際も頚部前屈位をとることが大切です。
具体的には、下顎下面と胸部との隙間は4横指くらいがベストだと思います。
頸部前屈位がとれているつもりでも、離れて見ると斜め上方に視線が向かっている(顎が上がっている)ことに気づくことが少なからずあるため、食事される対象の方を離れた位置で前方から見て、視線が水平にあるかを確認すると間違いないです。
代わって、頭部前屈位というのは、首はほぼ垂直で顎だけ引いたポジションを言います(文字通り頭部だけ前屈)。
頚椎のC1とC2のみを屈曲させた状態となります。
『はい、顎を引いて飲み込んでください』と指示すると頚部前屈でなく頭部前屈になることが多いので注意が必要です。
『自分のおヘソを覗き込んで下さい』といった指示で誘導するのがベターかもしれません。
頭部前屈では、咽頭腔が狭まって嚥下圧はかかりやすくなりますが、喉頭蓋の反転や舌骨・喉頭の挙上が阻害されるという欠点が大きいです。
同様に頚部前屈位でも過前屈になると逆に嚥下しにくくなるので要注意です!
頸部ポジショニングにおいて、この2つの違いをよく理解しておくこと、周知していくことが大切だと思います。