完全側臥位法~重度嚥下障害に対する新たな選択肢~

今回は、摂食訓練における『完全側臥位法』について書きます。

 

 

完全側臥位法、ご存知ですか?

 

 

完全側臥位法とは、文字通り、フラットな状態で患者さんを完全側臥位にして摂食してもらうというものなんですが、それにより咽頭残留の容量を約3倍にできるというメリットがあるんですね。

 

通常、咽頭残留の容量は、個人差はあるでしょうが、約5㎖と言われているので、それが約15㎖になるということです。

 

 

そのカラクリはというと…

通常、咽頭残留は喉頭蓋谷や梨状陥凹に留まるのですが、完全側臥位法では、フラットな状態で完全な側臥位になっているので、咽頭側面のスペースに残留させることができるからなんです。

 

 

 

梨状陥凹の残留は、その位置関係から誤嚥のリスクが高いのですが、咽頭側面のスペースに食物を残留させることは、相対的にみて声門から離れる訳で誤嚥のリスクも軽減できるということです。

 

フラット状態で摂食してもらうので、咽頭通過の際に重力による加速がなく、感覚低下で嚥下反射惹起遅延の方にも有利であると言えます。

 

 

実践してみると、頸部のポジショニングが取りやすく、筋緊張がかかりにくいところも良いなと思いました。

 

 

ALSの患者さんにも完全側臥位法でなら、アイスクリームの摂食が可能であったり、口渇を軽減するために症状が進行しても氷片を使っての直接訓練が可能でした。

 

 

ただ、この方法は前提として咽頭残留ありきなので、最後は必ず交互嚥下的にトロミ付きの水分などを嚥下して、咽頭残留をより危険度の低いものに置き換えるか、吸引をかけ咽頭残留を回収する必要があります。

 

 

また、咽頭への送り込みが重度に障害されている方には適用不可な場合もありますが…

 

従来であれば、間接訓練しか適用がなさそうな重度嚥下障害の方にも直接訓練(摂食訓練)を行う一つの選択肢として試みてはいかがでしょうか?

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