サルコペニアの嚥下障害~栄養管理の重要性~
回復期のリハビリテ―ション病院と急性期や維持期の一般病院では患者層は大いに違ってきますね。
回復期のリハビリテ―ション病院でST処方が出されるのは、ほぼ100%CVAの患者さんです。
なので、嚥下障害もほとんどが一側性の脳血管障害による一過性の嚥下障害(いわゆる通過症状)、仮性球麻痺、球麻痺のいずれかに当たると思います。
ところが、急性期(維持期)では、CVAの患者さんだけでなく、腎不全、心不全、肺炎なんかはもとより、大腿部頚部骨折や腰椎圧迫骨折など整形外科の患者さんにもST(嚥下)処方が出されます。
となると、嚥下障害の原因としては、サルコペニアが非常に多くなる訳です。
加齢、低栄養、廃用、浸襲や炎症、そういったことが原因となるサルコペニアの嚥下障害には、一種の〝まやかし″みたいなものがあると感じています。
特に初期評価においては。
というのは、反復唾液のみテスト(RSST)や改定水飲み検査(MWST)をクリア出来ても、いざ経口摂取となると全く飲み込めていないというパターンが少なからずあるからです。
しかし、回復期のみでの経験では、嚥下反射が良好であれば経口摂取も良好と思ってしまうのです。
なぜそうなるのか?
サルコペニアの嚥下障害は神経原性の嚥下障害ではないので、感覚は比較的保たれてるいます(加齢や廃用での感覚低下はあり)。
しかし、痩せ(咽頭腔拡大)や筋力低下によって、運動(喉頭挙上や咽頭収縮)は著しく低下しており、十分な嚥下圧をかけられないからです。
「ゴックンはしてるけど、飲めていない」という感じになります。
咽頭でシェイクしてるような『ゴキュッ』といった音がしていたり、分割嚥下がみられたり、咽頭貯留音がずっと鳴っていたり、嚥下後しばらくしてからムセがみられるなどです。
球麻痺に似ていますが、本質は似て非なるものです。
で、そんなサルコペニアの嚥下障害にどう介入するかですが…
基本はCVAの嚥下障害と変わらず、対処療法的に対応(トロミ付け、食形態down、代償姿勢など)し、その時々で誤嚥や廃用を予防しつつ、間接訓練や適切なタイミングでの摂食訓練を進めていくことになると思います。
焦らず、かつタイミングを逃さないように、その人の最大限のポテンシャル(ゴール)を目指していきます。
ここでポイントとなるのは、介入初期から栄養状態を把握し、適切かつ十分な栄養管理を行う事です。
二次性のサルコペニアの原因として、低栄養は最も多いものではないでしょうか。
神経原性の嚥下障害では自然回復も見込めますが、サルコペニアの嚥下障害においては、低栄養状態の改善(適切な栄養管理)なくして、嚥下障害の改善はないものと思います。
例えば、TP6.0以下、ALB3.0以下の患者さんが末梢の持続点滴だけで、嚥下訓練を行っていても嚥下障害は改善するどころか、ますます悪化していくことが、目に見えている訳です。