アイス棒での直接訓練が奏功した一症例
咽頭貯留音(いわゆるゴロ音)が常時あって、声量も小さく気息性嗄声で、構音も不明瞭。
唾液でのムセもみられるが、口腔内の衛生状態は概ね良好な70代の女性。NGチューブ留置。
唾液を飲むとき、舌が前方に突出して口唇からはみ出す様な動きがみられる。
RSST:2回、トロミ水テスト:4点
随意嚥下は比較的可能であったが、複数回嚥下促しても咽頭貯留音はクリアならず。
ギャッジアップ30度の頚部前屈位にてアイス棒の直接訓練から開始。
2本ずつ1日2回実施。
同時にPTでは離床進め、車椅子座位から立位まで実施。
1ヶ月間で、常時あった咽頭貯留音がかなり軽減され、アイス棒でのムセや湿性嗄声もほぼなくなった。
よって、ギャッジ30度の頚部前屈位にてゼリーの摂食訓練開始。
一口量は中さじの半量、一口量に対して2回の嚥下という条件が最もムセや湿性嗄声を生じにくかった。
当初、喉越し重視で通常のゼリー(商品名:エンゲリード)を使用も3日目より付着性や凝集性の高い高カロリーゼリー(商品
名:HC)に変更。
上記条件ならムセや湿性嗄声なく全量摂食が可能となる。所要時間は5分程度。
今後は、姿勢や一口量を順次アップし、複数回嚥下なしでの摂食へ移行図り、3食経口摂取を目指そうと思っています。
前院からムセや痰の為に絶食となった経緯あり、初期評価においても大きな改善は期待できないかと思っていました。
が、地道にアイス棒をやっていたのが奏功し、3食経口摂取への道筋が見えてきました。
ゼリーは誤嚥するし、ペースト食では咽頭クリアが困難。
かといって咽頭のアイスマッサージ等の間接訓練だけでは改善は困難と思われる今回のケース。
アイス棒は直接訓練であり、味も美味しい(100%りんごジュースを使用)ため、ゼリーの直接訓練までモチベーションを維持することができました。