気管カニューレ離脱のプロセスPart1:音声訓練編
今回は、気管カニューレが留置されている患者さんにどういったプロセスで離脱を進めていけばいいかをテーマにPart1、Part2に分けてお伝えしていきたいと思います。
Part1は音声訓練編、Part2は摂食訓練編として、それぞれ音声や経口摂取の再獲得をどう進めていけばいいのかについて解説していきます。
Part2はこちら→『気管カニューレ離脱のプロセス Part2音声訓練編 』
では、早速、気管カニューレ離脱のプロセスを示していきます。
1.気管カニューレ離脱の条件を確認します。
条件は下記の通りです。
・全身状態が安定しているか
・酸素化不要か
・意識レベルはJCSⅠ桁〜Ⅱ10程度保たれているか
・離床可能か
2.呼吸訓練を行い、モニタリングします。
呼吸訓練は下記の手順で行います。
①ポジショニング…リクライニング角度30〜45度程度で、可能な限り頸部前屈位に調整します。
②カフエアの確認…適切なカフ圧は20〜25mm Hgです。カフ圧計がない場合は、耳たぶくらいの固さを目安にしてください。
③口腔ケア
④吸引…口腔・咽頭→カフ上→カニューレ孔の順で実施します。
⑤カフ脱気…急激な脱気はカフ圧が変化し、ムセを引き起こすことがあるため、ゆっくりと徐々に脱気します。
⑥呼吸アシスト…胸郭を徒手的にアシストし、胸郭運動を強化します。
⑦カニューレ孔の開閉による呼吸訓練…グローブをした指で、吸気時は開放、呼気時は閉鎖します。もう一方の手は胸郭に手全体を当て、呼吸をアシストします。
⑧カニューレ孔の閉鎖訓練…カニューレ孔を徒手的に閉鎖して上気道での深呼吸や咳嗽を促します。呼吸状態に問題がなければ、テープなどで閉鎖し訓練時間内で可能な限り時間を延長します。
モニタリングでは、発熱(37.5℃以上)やSPO2の低下がなく全身状態が安定していて、分泌物の増加がないことを確認します。
3.上記2のモニタリングの条件を満たせば、上気道での音声訓練を実施します。
音声訓練では、呼吸訓練の手順から引き続き、発声・発語を促していきます。
「あー、いー、うー…」といった母音の持続発声、「おはよう」などの挨拶、氏名や見当識(場所や時間帯など)、体調・睡眠状態・空腹感・口渇・痛みの確認など短い発語から誘導していきます。
SPO2の低下や呼吸苦などに配慮しながら、徐々に会話のやり取りや発声持続時間を延長していけるとよいです。
4.カフ付きカニューレからコーケンネオブレス®スピーチタイプへ変更し、スピーチバルブ装着時間を延長させていきます。
スピーチバルブ装置時間は、1時間→2時間→午前や午後のみ→日勤帯のみ→夜勤帯も通してと徐々に時間を延長していきます。
延長する過程でもSPO2の低下がなく全身状態が安定しているかをモニタリングします。
5.カニューレ孔をキャップかテープで閉鎖し、上気道での呼吸状態をモニタリングしていきます。
日勤帯で上気道での呼吸状態が問題なければ、夜勤帯を通してモニタリングしていきます。
6.上気道での呼吸状態が安定していれば、主治医と総合的な判断を行い、気管カニューレを抜去します。
状態安定を確認する目安期間は3日〜1週間程度となります。
以上、気管カニューレ離脱のプロセスPart1 音声訓練編は終了いたします。
最後までお読みいただきありがとうございました!
※Part2摂食嚥下訓練編は、こちらからどうぞ