リスクを優先するか、QOL(生活の質)を優先するか
食べること、食事の質は生活の質にも大きく関わることだと思います。
美味しいもの、好きなものを食べられる喜びは、人生の大きな喜びの一つではないでしょうか。
そこで、摂食・嚥下に携わる者として、リスク回避をとるか、QOL(生活の質)をとるかは、度々悩む問題となります。
つまり、誤嚥等のリスク回避を重視すると非経口摂食にするか、味の落ちる嚥下食やトロミ付きのお茶(水分)しか食べ飲み出来ない状態にせざるを得ないことがある訳です。
しかし、それは、その人の人生・生活を考えると本当に良いことなのかと。
本人や家人が一応の納得をしていれば、それはそれでまだいいのかもしれませんが、誤嚥や窒息のリスクはあっても『残り(わずかな)人生、好きなものを食べさせてくれ。それでダメならそれでもいい。』みたいなことを言われたり、態度で示されると何が正解なのか考えてしまうことがあります。
まぁ、そんなことをこの仕事を始めてからずっと考えていて、自分なりに悩んで出した一応の結論が…
『病院にいる限り、STの立場としてはリスク(回避)を優先する』
というものでした。
この結論は、正直、良いのか悪いのか自分でもよくわかりません。
立場を決めず、その時々によって柔軟に対応できるのがベターなのかもしれませんし…。
しかし、自分の立場を一度明確にした方が、その都度、ブレるより自分のやっていることに対しても相手に対しても説得力があるのではないかと思います。
また、摂食・嚥下リハビリテ―ションにおいて、たくさんの患者さんをみていると誤嚥や窒息のダメージにより、その人の残りの生活の質が更に下がってしまうという状況もたくさん経験します。
更に、その人のポテンシャルを最大限引き出すには、その時々で最適な食事内容(例えそれが非経口での栄養摂取でも)があって、段階的に登っていく必要があるんだとも思っています。
リスク回避するにせよ、最終的には、結果的にはQOL向上に寄与するという想いはもちろんありますし。
いずれにせよ、人それぞれ、それぞれの立場で色々と考えることや主張があるのかなと思います。
今回は、同じようなことで悩まれてる方がいれば、参考になるかはわかりませんが、今の自分はこう思っていますということで書いてみました。