摂食嚥下リハビリテーションにおける血液データの見方
今回は、血液データを摂食嚥下リハビリテーションに活かしていくことをテーマにお伝えしていきます。
血液データをみるにあたって抑えておきたいポイントは3つあります。
それは「栄養」 「炎症」「脱水」です。
それぞれ順番にお伝えしていきます。
ポイント1.栄養
まず、TP(total protein:総蛋白)とAlb(albumin:血中アルブミン)の数値で栄養状態をみていきます。
どちらも低値になるほど、栄養状態は不良と考えられます。
※ただし、Albの数値は肝疾患や炎症などでも低下し、逆に脱水では上昇しますので、ご注意ください。
特にTP6.0以下、ALB3.0以下は明らかな低栄養状態と判断します。
経験上、Alb2.0以下になると中心静脈栄養(TPN)を行われても栄養状態は改善しにくい印象です。
※栄養管理に関して詳しくは別記事『経腸栄養法と経静脈栄養法のメリット・デメリット』をご参照ください。
低栄養(低アルブミン血症)になると食思が著しく低下しますし、サルコペニア(筋力低下)が進み嚥下障害は増悪しやすいです。
また、臥床傾向になり、体力や抵抗力・免疫が落ちることから誤嚥性肺炎のリスクも高まります。
栄養状態の改善なくして、摂食嚥下リハビリテーションは成功しないといっても過言ではないので、必ずチェックしておきたい項目でもあります。
栄養状態を把握し、今攻めるべきか、守るべきかの判断していくのもよいと思います。
「攻める」とは改善に向けて積極的に訓練・アプローチをしていくこと、「守る」とは誤嚥や誤嚥性肺炎を予防(軽減)することに注力するイメージです。
ポイント2.炎症
続いて、CRP(C-reactive protein:C反応性蛋白)やWBC(white blood cell:白血球)の数値で炎症反応をみていきます。
基準値を大きく上回っている場合は、炎症が強いと判断できます。
炎症反応に誤嚥のエピソードや呼吸器症状を伴っていれば、誤嚥性肺炎や誤嚥性気管支炎を疑います。
呼吸器症状とは、咳、痰、呼吸困難、喘鳴、発熱などです。
肺音の聴診も判断材料になるので、興味のある方は別記事『STが知っておきたい肺音聴診の基礎』をご参照ください。
ポイント3.脱水
最後は、BUN(blood urea nitrogen:血中尿素窒素)の数値やCre(creacinine:クレアチニン)との比で脱水をみていきます。
脱水では、BUNが上昇します。
ただし、BUNは腎機能障害でも上昇するため、その時はCreとの比(BUN/Cre比)でみていきます。
BUN/Cre比が10以上の場合は脱水や消化管出血が考えられます。
この時、Hb(hemoglobin:ヘモグロビン)が上昇していれば脱水、低下していれば消化管出血が考えられます。
脱水も意識障害をきたしたり、嚥下障害を増悪させる要因ですので、しっかりチェックしておきたいです。
栄養状態もそうですが、脱水が改善されるに伴って嚥下状態が上向いてくることは臨床上よく経験します。
今回の内容をまとめると
1.摂食嚥下リハビリテーションにおける血液データでみるべきポイントは「栄養」「炎症」「脱水」の3つ!
2.それぞれ具体的な項目としては、「栄養」がTP、Alb、「炎症」がCRP、WBC、「脱水」がBUN、Cre、Hbをチェック!
3.低栄養ではTP、Albが低下(Albは肝疾患や炎症でも低下)、炎症ではCRP、WBCが上昇、脱水ではBUN/Cre比、Hbが上昇(Albも上昇)!
となります。
摂食嚥下リハビリテーションに血液データを活かすファーストステップとして、カルテに上記項目の数値を記録していくことから始めてみるのはいかがでしょうか。
以上、今回も最後までお読みいただきありがとうございました!